友人に薦められ『竜の学校は山の上』を読む。いいよ、これ!
絶滅危惧種・竜の保護をさりげなく現実世界の生き物たちに重ねて読ませる表題作はじめ、ケンタウロスと人間(馬人と猿人)が混じって暮らす現代日本や、御伽草子と鏡花をミックスしたような昔話、RPGで魔王が倒された後の世界のアイロニーに充ちた顛末などがしずかな筆致で語られる。触れたらばっさりな切れ味は無いけれど、素朴な絵柄あいまって気持ちに沁みる作品群だ。
特に魔王亡き後の世界を描いた数作には、好きだったゲームを思い出させられた。そういえばあの世界でも、本質的な敵は魔ならざる者だったなあ。
なお作者サイトでは本書中2編を公開している。ぜひぜひ、一読をお勧めしたい。んでもって「いいなぁ」と思ったら書店へ走れ。重版出来であるぞよ。
2012年03月29日
世界の半分を貰ったら
posted by 司葉柾樹 at 14:27| Comment(0)
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2012年03月24日
赤いイワシが多すぎる
『今をたよりに』。グレイス・アンド・フェイヴァー・シリーズ、待望の新刊。だったんだが、今回出だしがよかっただけに若干しおしおのぷー(古語)である。
いつもながら雑多な問題を抱えつつ、遺産の条件である仕事探しに余念の無い主人公兄妹。(現代に至るまで)郵便制度のいーかげんなアメリカゆえの問題を発見し、それを職業として成り立たせようと奔走するうち事件が起きて…といつものパターンなのだが、このパターンを作者・チャーチル女史が打破しようと四苦八苦したものなのか、話が進むにつれどうにもグダグダした印象になっていくんだなこれが。
ミスディレクションをばら撒くのはいいんだが、一番最初に疑わしく思える人物のところへ話が流れずイライラする。ちょうど『かまいたちの夜』をやってて、フラグが揃ってないと真犯人を指定できないあの感じ。そして後半で登場するあるキャラクターが、どうにもチート臭。デキスギ君にもほどがないか、キミ。でもってラストまでその勢いが削がれないもんだから、場外から乱入して1番でゴールを決められちゃいましたてへぺろ☆みたいな座りの悪さが読後に残ってなんともいえん。
ぶっちゃけ、大恐慌から第二次世界大戦前夜のアメリカの田舎町の空気が感じ取れる以外は、ミステリとしてもキャラものとしてもいま一歩ではないかと。遠くに迫る暗雲を眺めてみたい向きかな。
いつもながら雑多な問題を抱えつつ、遺産の条件である仕事探しに余念の無い主人公兄妹。(現代に至るまで)郵便制度のいーかげんなアメリカゆえの問題を発見し、それを職業として成り立たせようと奔走するうち事件が起きて…といつものパターンなのだが、このパターンを作者・チャーチル女史が打破しようと四苦八苦したものなのか、話が進むにつれどうにもグダグダした印象になっていくんだなこれが。
ミスディレクションをばら撒くのはいいんだが、一番最初に疑わしく思える人物のところへ話が流れずイライラする。ちょうど『かまいたちの夜』をやってて、フラグが揃ってないと真犯人を指定できないあの感じ。そして後半で登場するあるキャラクターが、どうにもチート臭。デキスギ君にもほどがないか、キミ。でもってラストまでその勢いが削がれないもんだから、場外から乱入して1番でゴールを決められちゃいましたてへぺろ☆みたいな座りの悪さが読後に残ってなんともいえん。
ぶっちゃけ、大恐慌から第二次世界大戦前夜のアメリカの田舎町の空気が感じ取れる以外は、ミステリとしてもキャラものとしてもいま一歩ではないかと。遠くに迫る暗雲を眺めてみたい向きかな。
posted by 司葉柾樹 at 00:00| Comment(0)
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2012年03月20日
あまざかる ひなからみれば
かつて『動物のお医者さん』に憧れたとH大獣医学部に押し寄せた受験生を見て、我ら道民は少なからず苦笑した。あのさっぱりした画と軽やかなストーリーの余白がどれほど重い(或いは臭い)現実で埋まっているか、読みきれずに来た子等も多かろうなと。
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』にもまた然り。つかアレ読んでおいて放牧場を勝手に見に行った馬鹿がいると聞いて始末におえんなと。あれだけしっかりみっちり馬の性質と育成の苦労について語られてるものの、いったい何処を読んでたんだクソだわけがぁッ!
そうして三度、蝦夷の民が内地の読者を笑おうとして、いや待てこれは誤読曲解のしようが無いぞつか大袈裟に描いてると思われるんじゃないかいいからそのまま真に受けろよ生き物相手の仕事ってなぁ半端じゃ出来ねえよついでにホッカイドーは怖いとこだぞとうんうん頷いたのが『銀の匙 Silver Spoon』。『百姓貴族』もぜひ併せてお読みください、な北海道酪農事情物語である。
自分の行く末にビジョンをもてないという、中学生としてはごくアリガチな少年が、しかし問題をはらんだ家庭から逃れるために選んだ全寮制の酪農高校での生活。都会ではありえない出来事頻出つか爆出、動物の命を扱う=食う仕事のリアル、もう地に足が着きすぎて、原住民にとってはほぼ意外性の無い話になっている。つか生粋の酪農家生まれの作者がよくぞ余所者視点で描いておられるなと、そっちに感心するぐらいか。鹿を撥ねたぐらいじゃ驚けないもんね、フツー。
ところで作者・荒川氏といえば『鋼の錬金術師』でメガヒットをかっ飛ばし、その後も『百姓貴族』や本編で読者を沸かせる傍らで二児の母となっておられたとか。マグナ・マーテル的な逞しさにも感服であるめでたやな。
『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』にもまた然り。つかアレ読んでおいて放牧場を勝手に見に行った馬鹿がいると聞いて始末におえんなと。あれだけしっかりみっちり馬の性質と育成の苦労について語られてるものの、いったい何処を読んでたんだクソだわけがぁッ!
そうして三度、蝦夷の民が内地の読者を笑おうとして、いや待てこれは誤読曲解のしようが無いぞつか大袈裟に描いてると思われるんじゃないかいいからそのまま真に受けろよ生き物相手の仕事ってなぁ半端じゃ出来ねえよついでにホッカイドーは怖いとこだぞとうんうん頷いたのが『銀の匙 Silver Spoon』。『百姓貴族』もぜひ併せてお読みください、な北海道酪農事情物語である。
自分の行く末にビジョンをもてないという、中学生としてはごくアリガチな少年が、しかし問題をはらんだ家庭から逃れるために選んだ全寮制の酪農高校での生活。都会ではありえない出来事頻出つか爆出、動物の命を扱う=食う仕事のリアル、もう地に足が着きすぎて、原住民にとってはほぼ意外性の無い話になっている。つか生粋の酪農家生まれの作者がよくぞ余所者視点で描いておられるなと、そっちに感心するぐらいか。鹿を撥ねたぐらいじゃ驚けないもんね、フツー。
ところで作者・荒川氏といえば『鋼の錬金術師』でメガヒットをかっ飛ばし、その後も『百姓貴族』や本編で読者を沸かせる傍らで二児の母となっておられたとか。マグナ・マーテル的な逞しさにも感服であるめでたやな。
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