2009年09月29日

夏の終わりに怪談も善き哉

 めっきり秋めいてきて夜風が冷たく、川にはホッチャレ流れる今日この頃。む、いきなり浪漫の欠片も無くなってしまったのう。手にした本は『幻想綺帖 一(朝日新聞出版)』波津彬子さんの麗しき最新作だというに。
 特に気に入ったのは『嵐の夜に』。モンゴメリの原作は読んだことがなかった、というか「こんなモノも書いてたのか」と驚きつつ入って、小味の利いた展開に満足。ありきたりな幽霊譚なのに、クライマックスへ至る演出が上手く盛り上げてくれる印象。実写でミニドラマとかにしたら良さそうだと思うがどうかな。
 そして古き良き名作怪談をコミック化という試みとなれば鉄板ネタの『山月記』。この人一流の耽美な世界になってるが、やはりというべきか虎と化して消えてゆく男の悲哀は見事に描き出されている。寂寥と憂愁漂う幕切れは、原作を最初に読んだ時の心地を蘇らせられるものがありましたよ、うん。虎は微妙に可愛いが(笑)
 キャラで好ましかったのはサキの『開いた窓』の少女。原作だと可愛げもヘチマも無い性悪糞ガキだが、波津さんの筆にかかると毒気はあるものの困った悪戯お嬢さんで許せてしまえそうなところが不思議だ。現実に傍にいたら、やっぱり堪らんだろうとは思うけどね。
posted by 司葉柾樹 at 15:03| Comment(0) | 読書
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