2011年06月23日

愛って何か知ってる?

 タイトルはそのスジの人には言わずと知れた名作SFの台詞だが、未来でなくても荒廃は世界の至るところを蝕んでいる。戦地で、災厄に見舞われた土地で、或いは大都市の片隅で。
 ──地獄は個々の内にあると言ったのは、誰だったか。

 『コーパスへの道(デニス・ルヘイン/著、加賀山卓朗・他/訳、ハヤカワ・ミステリ文庫』は、表題作含めさのみ新味の無い短編集だった。
 ただ中に1編『グウェンに会うまで』で戦慄めいた感動に叩きのめされるまでは。




 こいつは、凄い。

 …物語はシンプルだ。犯罪者父子の暗いロード・ムービー的なもの、互いに語る過去に綴り合わせるものひとつない殺伐。徐々に形を見せてくる互いの目的。そしてラスト、そこから誰一人何一つ得ることの無い暗澹たる終幕に。

 紛れも無い愛の本質を突きつけてくる。

 翻訳の妙あって、本気で泣かされた。キングの『ペット・セメタリー』が、あのページ数を積み上げて最後の1ページにもってきた爆弾を、この紙数でぶちかまされようとは思わなかった。
 もっとも、これを戯曲化した一編を直後に持ってくるのはいささか屋上屋、艶消しのような気がしないでもない。己を知るもの誰一人無いと悟るほどの孤独、真の地獄を抱いた主人公に過去も未来も最早ありはしないのだから。
posted by 司葉柾樹 at 15:26| Comment(0) | 読書
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