2012年03月20日

あまざかる ひなからみれば

 かつて『動物のお医者さん』に憧れたとH大獣医学部に押し寄せた受験生を見て、我ら道民は少なからず苦笑した。あのさっぱりした画と軽やかなストーリーの余白がどれほど重い(或いは臭い)現実で埋まっているか、読みきれずに来た子等も多かろうなと。
 『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』にもまた然り。つかアレ読んでおいて放牧場を勝手に見に行った馬鹿がいると聞いて始末におえんなと。あれだけしっかりみっちり馬の性質と育成の苦労について語られてるものの、いったい何処を読んでたんだクソだわけがぁッ!

 そうして三度、蝦夷の民が内地の読者を笑おうとして、いや待てこれは誤読曲解のしようが無いぞつか大袈裟に描いてると思われるんじゃないかいいからそのまま真に受けろよ生き物相手の仕事ってなぁ半端じゃ出来ねえよついでにホッカイドーは怖いとこだぞとうんうん頷いたのが『銀の匙 Silver Spoon』。『百姓貴族』もぜひ併せてお読みください、な北海道酪農事情物語である。
 自分の行く末にビジョンをもてないという、中学生としてはごくアリガチな少年が、しかし問題をはらんだ家庭から逃れるために選んだ全寮制の酪農高校での生活。都会ではありえない出来事頻出つか爆出、動物の命を扱う=食う仕事のリアル、もう地に足が着きすぎて、原住民にとってはほぼ意外性の無い話になっている。つか生粋の酪農家生まれの作者がよくぞ余所者視点で描いておられるなと、そっちに感心するぐらいか。鹿を撥ねたぐらいじゃ驚けないもんね、フツー。


 ところで作者・荒川氏といえば『鋼の錬金術師』でメガヒットをかっ飛ばし、その後も『百姓貴族』や本編で読者を沸かせる傍らで二児の母となっておられたとか。マグナ・マーテル的な逞しさにも感服であるめでたやな。
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2012年02月21日

後始末異聞

 昨年末から続いた親族の後始末に、ようやくひと区切り。手続き中最大の難物と思われた不動産の相続登記を完了させた。もっとも、相続人の間で話がついて、かつ故人の戸籍がきっちり揃っていればほぼ一発…なんだが、とにかく後者が面倒だったのだ。
 日本では、生まれて親の戸籍に入る・結婚して別戸籍になる・引っ越して本籍地を移動させる・離婚する・再婚する・また引っ越して本籍地移動…とかやってると変更前の戸籍が控として元の住所に残るシステムなんだが、死んで相続が発生したとなると、その全てが必要になるわけだ。上の例の場合は、だから6通の「改正原戸籍」がある。んでもってプラス、死亡が記された戸籍。
 これらが自治体をまたいでると、そりゃーもう面倒になる。例えば沖縄生まれで結婚が北海道、家を建てて本籍地にしたのが東京とかだったら、煩わしいなんてもんじゃない。もっとも当方の場合は道内だけで収まってたのでさほどの事はなかったし、手元にある死亡時の戸籍から前の住所を順繰りに辿るのはちょっとした探偵ごっこのようで面白くもあるのだけれど。

 こういう時、本当にネットの発達と有難味が痛感される。たいていの事はググれば一発、そして自治体のウェブサイトで取り寄せ方法を読めば、書式に記入して小為替を用意、後は返信用封筒に切手を貼って送るだけ。
 んでもって登記申請書なんかも全て役所のサイトに揃ってるし、経験者が懇切に解説してくれている個人サイトも枚挙に暇が無い。個別には申し上げませんが、皆様ほんとうにありがとうございました。
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2012年02月12日

悪魔が来たりて呪うべし

 休日2日目。本日は映像在庫を一気に!と思ってたのだが、勢いがつかずにグダグダ居眠りしつつ、何故か昨年視聴録画した1996年2サス版の『女怪』を流し観。目当ては珍しく二役をこなす神保悟志氏(当時35歳)で、その点についてはかなり満足度が高かったのだが…いかんせん、ストーリーや演出が「無ぇわ」の続出だったので、ちょいと文句を書き連ねてみる。
 えーと。
 酷ぇ原作レイプだったわこれ。←「ちょいと」ではなかった模様



 序段の(オリジナルに無い)殺人は、まあ尺伸ばしと話の継ぎ合わせということで理解できる。だが本筋を変えるなよ、トリックを無にするなよ。ヒロインが同一人物に気付かずに●しちゃって後で明かされる真相が(ホームズ譚の『唇のねじれた男』よろしく「えーと…どうしよう」的居心地の悪いだけエンディングを迎えることも出来たろうにと)悲しい話なのに、単なる殺人の連鎖になってる。そもそもアレじゃ二重生活のわけがイミフだろ。
 金田一のキャラが改悪されてるのも痛い。その朴訥な人柄もあってか女性に対して引っ込み思案な彼が、惚れた相手のためシラノよろしく陰ながらナイト役に徹するも、それが完全に裏目に出た…のがまるで描かれない。据え膳食わずにスルー、それを後で非難されるなんて話にされたら大横溝が墓石の下ででんぐり返しするぞ。脚本家はなんと心得るか。
 まあアレだ、ビジュアルは良いので原作ファンは必要な部分を脳内キャプチャして挿絵に使うのがオススメ。とくにファンゆえの身贔屓を差っ引いても神保氏の画はイケてる。前半の二重眼鏡キャラは衣装やメイクで作る部分が大きいとはいえなかなか似合ってるし、後半登場のほうは文句のつけようが無い。街灯に浮かぶシルエットの色男っぷりは若干嫉妬したくなるほどだ。あくまで若干なんだからね!

 つーことでドラマをうっかり観た方にも原作一読がお勧め。ついでに、おそらく尺伸ばしに使われた部分はこれだろうと思うので紹介。こっちはフランキー堺氏のビジュアルでは残念ながら合わないが。

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2012年02月11日

**小説

 約1ヶ月半ぶりの休日。

 12月の半ばに親族が急死してからこっち、平日は通常業務、休日は全てあちらの片付けに追われて過ごしてきた。ただ死んだだけならまだしも変死ファクターまでオマケとあっては、事後処理もイレギュラー三昧である。あのな、こちとらレギュラーでも仕切った事が無いんだよ勘弁してくれ。
 葬儀の手配に警察の対応、相続財産の整理に諸手続き、やる事は多岐に渡りしかも煩雑である。およそひと一人が生きるのも難儀なものだが、死ぬのもなかなか面倒なものだと痛感するばかり。自分の時は相方に迷惑のかからぬよう、せいぜい片付けておくとしよう。ま、当方が死んで残るものといえばヲタグッズとかヲタグッズとかヲタグッズとかだけどな。

 とまあ、そんな流れの末、今日はそれらがひと段落して久々に解放されたわけである。しかも3日連続!
 いいだけダラダラ寝て、積みあがった本と録画ものを処理するぜ!

 とか思ってたら献血センターからメールが来た。管区内で大手術があって200人分を使ったので、登録者はぜひ来て欲しいとのこと。80リットルかあ、エリザベート・バートリの足湯ぐらいか?とか思いつつ、手近にあった文庫本を掴んで出かける。モノは『怪笑小説(東野圭吾・著/集英社文庫)』。
 そして帰宅して、だらだら寝転びかつ転寝しつつ残る3冊(黒笑小説・毒笑小説・歪笑小説)を読み終えた。



 瞠目し膝を打つような意外性や突飛さは、正直言って少ない。いまどきヤングw風にいうなら「フツーに面白い」というところ。短編にはそのテのファクターを求めがちな私としては、あまり読みつけなかったタイプだ。
 しかし、人を逸らさない。話の途中で本を置かせない不思議なヒキの強さがある。この人、とにかく読み易い文章を書くんだよな。
 また興味深いのは、作風の変遷だ。初期のそれは、何か、思い出させる微妙な感触がある。で記憶の底を掘ってみたら、古きよき時代のSF作家たちに似ているのだ。特に電車の中の情景を活写した1編など、筒井康隆の斜め視線を小松左京がきちりとした文体で書いてオチは星新一がつけました、みたいな味わい。
 それが近年になってくると、毒が消え棘が影をひそめて視線がやさしくなる。特に最新刊での出版業界の人々を描く筆はコミカルな中に情があって、単にネタとして弄ってるだけではないなあと思わされる。思うに男性作家にはこの傾向が強いような。あ、いや、世の閨秀作家が歳を重ねるにつけ苛烈誅求になってくるなどと言うつもりはありませんが。ありませんってばよ!
 とまれ、4冊セットで、巻末までじっくり読み込む本好きにお勧めしたい。あ、もちろん買うこと前提だ。貸さないからな。←最終作ネタ
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2011年11月08日

のろわれたよる

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 いまや我が家唯一の猫、ぼたんが我が家に来てちょうど5年。掌サイズの牡丹餅のような色合いの柔毛の塊は、今やファンヒーターの吹き出し口に陣取って温風を遮るようなボリュームへとシンクロンマキシム(古)した。

 ところで今夜、飼い主は事故った。一時停止無視の車を避け損ねてつっかけられただけだが、愛馬(MTBだけどね)はお星様である。
 厄日という言葉を思いつつ、布団の上ににのさばる時の流れの重さ(3.5Kg)に無常を思わずには居られない。

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2011年10月30日

さらぬ別れもありと言へば

 白猫・姫は、たしか16歳。
 黒猫・ジェイクは20歳だった。
 そして今朝起きて確認に行くと、灰色猫・チーズがかれらの後を追いこの世にオサラバしていた。

 仮にも冗談にも純血のペルシャだったので放っておくと毛が絡み、だというのにブラシ嫌い風呂嫌いの面倒なヤツだった。しかもこの種にありがちな腸の障害を抱えており、ここ数年は糞詰まりの度に抜いてやらねばならんという厄介っぷり。末期には飯やお湯(飲用)と同じように、ダミ声で「な"〜"」とそれを要求して来るようになっていた。
 顔を踏んだり服にゲロ吐いたり、とことん丈夫な歯で加減ナシに食いついたり、およそ猫がやってくれるあらゆるギャクタイを食らわして、こっちが寝てる間に勝手に去っていくというのはどういうつもりなのだろう。24年も付き合ったのだから、せめて猫又に近かった証にサヨナラぐらい言ってくれてもいいと思うのだが。

 最後まで(強制ながら)メシ食っていた食欲のゴンゲー。

 大量に買っておいた老猫用のフードの山を眺め、これも嫌がらせの一部かなと思いつつ、骨と皮になった体を横たえなおして相方を起こしにいく。

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2011年10月28日

マヤの暦の終わる日に

 マヤの暦が尽きる今日、世界は終焉を迎えるという話がネットを巡っている。
 そんなマクロを他所にミクロな我が家はというと、老猫チーズの具合が宜しくない。
 24歳といえばヒトなら100をふた周りぐらい超えてるらしいので、まあ何があってもおかしくない。週明けに腰が立たなくなったなと思ったらみるみる衰弱し、既に寝たきりになっているが…まあ、あと数日もてばいいほうだろう。
 流動食とミルク、あとは希釈したスポーツドリンクを与えて、ただ息をしている時間を引き伸ばしている状況だ。

 暦が半端に終わっているのは、地上の何処かで帝国の最後の末裔がひっそり息を引き取る日だったりして。ひょっとしたらオマエか?
 とかアホを言いつつ撫でている間に夜半を過ぎた。とりあえず、マヤの暦は担当者が面倒くさくなって中断したということでよさげである。
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2011年10月21日

ニュース雑感(リビア)

 虎と呼ばれた男の末路をTVが報じる朝。群集が昂ぶる感情のままに引き回し射殺したように見える映像は、また同じことを繰り返す予兆にしかならんなぁ。かつて革命後に血の粛清劇がおっ始まったフランス軍が空爆支援し老いた独裁者の退路を断ったというのがまた何とも。ついでに言うならフランスは二次戦後の一時、共同とはいえこの地を支配した国だし、今回の騒動も欧米諸国が率先して手引きしていたからますますモヤつくものがある。
 まあ、地震や津波の後始末もまだ終わらんどころか、原発事故への対処も後手に回りまくっている政府を頂いている身でもつ感想ではないかもしれないけれど。それでも他山の石はそれなりに重いや、ね。
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2011年10月20日

めめんともりな秋の夕暮れ

 わが身よにふるながめせしまに、と閨秀歌人は詠ったがその言の葉の正しからずや、先月初の長雨とともに押し寄せたビジーの波に押し流されてどんぶらこしてる間にあれよと日々は流れ去る。ついこの前まで暑さに負けて床に就くのを先送りしていたのが布団恋しく猫と潜るようになり、目覚める朝ごとに涼しい:寒いの比率が微妙になってきた。
 そして今日、出勤途上に豊平橋の上から本年初ホッチャレを見た。
 …川底にでろーんと横たわるシャケを眺めて季節を感じるのは、あまり雅なものではないか。のう小町。←誰

 社用で買い物に出た先で特撮リボルテックの骸骨剣士Ver.2が投売りされてるのを発見、2体保護。や、安かったからであって、決してVer.1を買い損ねた腹いせなんかじゃないんだからねっ!
 とか言いつつ、これで髑髏小町ネタと絡められないかなと考えてる私。…えーと、完全体2人と上半身オンリー2人でコーラス?めっきり陽気な感じになっちゃうんですが。しかもパーカッション付きだよヲイ。

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2011年10月10日

ハンクラフィールド若干拡大

 札幌にユザワヤができたというので、ねこまと二人で冷やかしに行く。ひょっとすると日本最大?の手芸用品小売店の上陸ということでそこそこ期待はするものの、ビルのワンフロアなのでさまざまなジャンルがぎゅぎゅっと圧縮されているなというところ。品揃えにおいては地元の老舗のほうが豊富なのだが、複数素材を一度に見渡せるという点ではなかなか使いやすい構造だ。
 そう、私のようなヲタ趣味には向いているといえよう。同じビルの地下にはボークスもあるしな、うひひひ。
 と笑ったら相方にかなり冷たく見られたことだけは気をつけよう。軍資金が減ると戦ができない。桑原桑原。
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